コーヒー豆の製法

当店で製造販売している、コーヒー豆の製法をご紹介します。

 

【生豆仕入れ】

当店は小さな個人店のため、何10種類もの生豆を扱うことは困難です。一方、店主は長年のコーヒー経歴において、少数の生豆からでも多種多様な風味の商品を開発してきました。

当店では、生豆を購入する前に複数のサンプルを取り寄せ、カッピングにより当店で表現したい風味を実現できる豆を厳選し、原料仕入れしています。『※1』 また、同じ生産国、同じ地域、同じ農園であっても、年によって作柄は変わるので、カッピングは少なくとも年1回は実施し、必要があれば仕入れ先の地域や農園を変更し、当店商品の品質安定を図ります。

 

【ブレンド配合レシピ考案】

まず表現したい風味を決めます。

例として当店自慢のアイスコーヒー用のコーヒー豆「アイスブレンド」『※2』では、トップのスモーキー感のインパクト、ミドルの苦味とコク、後キレのよさ、を表現することとしました。

風味を構築するパーツとして、仕入れた生豆を どの焙煎度にするか、を繰り返し焙煎して決定します。これを繰り返し、必要なパーツが揃うだけの生豆数について焙煎度を決定していきます。

この複数のパーツの組み合わせについて 繰り返しカッピングし、表現したい風味となる配合比率を見極めて決定し、レシピが完成します。

結果として「アイスブレンド」は、ブラジル、コロンビア、インドネシアマンデリン、インドの4種の焙煎豆のアフターブレンドとしております。

自家焙煎コーヒー店で、このような手間のかかる手法で作っているところは稀と思います。一方、店主も働いていた大手ロースターでは珍しいことではありません。『※3』 当店の強みは、大手より新鮮な豆を提供できることと、レシピ考案者自身が店に立ち、お客様の好みを伺って、ひとりひとりに合った豆を提案できることになります。

 

【生豆ハンドピック】

生豆は、焙煎前にハンドピックを行い、風味に悪影響を与える欠点豆を除去しています。焙煎前の生豆は黄色〜緑色であり、欠点豆は一部が茶色〜黒色のものが多く、生豆段階のほうが圧倒的に判別しやすいため、焙煎前での除去が効果的です。

(店頭にハンドピック除去サンプルがございますので、よろしければご覧ください)

 

【焙煎】

当店では、国産No.1メーカー製の半熱風焙煎機にて、13-14分かけてじっくりローストしています。焙煎は、条件設定だけに頼ることなく、季節変動や日々の温度湿度変化に応じて、焙煎温度、排気、音、煙なども判断材料としながら調整し、焙煎終点を見極め、豆を排出します。焙煎時間が長いため、終点の調整が可能です。これにより、常に安定した品質の仕上がりとしています。

 

【焙煎後ハンドピック】

焙煎後には、改めてハンドピックを行います。焙煎前後の2回のハンドピックにより、異味異臭の元は ほぼ完全除去できているかと思います。これにより、1杯毎にミル挽きしてコーヒーを淹れる方が、毎カップいつでも美味しくお飲みいただけます。

なお焙煎後ハンドピックは、焙煎前と同じく異味異臭の元となる豆の除去を目的としており、豆形状の見た目の良否は除去対象としておりません。豆形状の見た目を重視される方は、ハイエンド品を販売している他店をご利用ください。

 

【焙煎豆ブレンド】

ハンドピック後に、ブレンドします。

表現したい風味になるよう 複数の生豆を複数の焙煎度に焼き分けたパーツを、焙煎後にブレンドすることで、当店のコーヒー豆は完成します。

 

【お客様へ】

当店のモットーは『毎日に豊かな香りを』です。

前述のように、生豆選びからハンドピック、焙煎、ブレンドと、原料にも製法にもこだわった当店のコーヒー豆ですが、お客様においては何ら構えることなく、普段通りにドリップしていただければ、毎カップいつでも美味しくお飲みいただけます。

なお当店では、器具が値ごろで、メンテナンスにも手間がかからないペーパードリップを推奨しています。コーヒーを飲む前後の作る手間、器具の手入れや洗浄する手間でストレスが溜まったのでは本末転倒です。簡便で十分に美味しい淹れ方で、毎日コーヒーを楽しみ、リフレッシュしていただけたらと願っております。

 

 

※1:2024.6-8月時点で当店で使用している生豆は、結果的に、インド豆を除くすべてがSCA評価80点以上のSpecialty Coffeeです。Specialty Coffeeであっても、残念ながら当店で使いたい品質に満たないものがあり、それは選択時に除外しました。

Specialty Coffeeは、生産地に生豆がある時点で生豆に評価付けされたものであって、日本のコーヒーショップに並んだ焙煎豆は評価付けされていません。焙煎豆が美味しいかどうかは、Specialty Coffeeなどの言葉に拠らず、お客様自身が味わって判断するものとなります。情報に踊らされず、実際に飲んで、ご自身の五感で選ぶことが、満足のいくコーヒーに出会う近道です。

※2:コーヒー豆「アイスブレンド」は、2024/10/24に「クリアビターブレンド」に名称変更しました。

※3:大手ロースターでは、例えば一回の受注量1000kgに対し焙煎100kgを10回繰り返しており、アフターブレンドすることが大きなコストアップにならない生産環境にある点が、自家焙煎店と異なります。そのため、アフターブレンドにより風味を向上させ、競合他社との差別化を図ることがあります。またブレンドには、微調整により品質安定させやすい利点もあります。 単一生豆/単一焙煎しかやっていない経験値不足の方ですと、このブレンドという面倒な工程をやろうという発想には至らず、ブレンドによる風味向上の可能性検討すらしていない、ということが多いだろうと推察します。 昨今はシングルオリジン(単一生豆/単一焙煎)がもてはやされる状況にあるため、コーヒー未経験者であっても専門家っぽく経験豊富っぽくシングルオリジン焙煎豆を販売できる業界体制・仕組みが出来上がっています。

店主としては、お客様が まずは「私の定番(お気に入り)は◯◯店の◯◯ブレンド」というものを持っていただけるといいな、と思っています。ブレンドであれば、農作物の作柄の良否に拠らず、なるべく品質安定するように店舗で調整されるものと思われ、来年/再来年も同じ味が楽しめます。 そしてその上で、たまに定番以外(シングルオリジンなど)を飲んで、こんなのもあるんだー、となるのが健全かと思います。 自宅で普段使う調味料と、旅行先で見つけた変わった調味料、のような関係です。